しゃらん。しゃらん、しゃらん、しゃらん。
 しゃらんしゃらんしゃらんしゃらん。

 五分ほど待っただろうか。鈴の大きな音が響いた。

「かけまくもかしこき おおかみのみかみ。みそぎはらえたまいしときに なりませるはらへどのおおかみたち。もろもろのこらの そだついのちあらんをば。そだてたまい みちびきたまえと もうすことをきこしめせと。かしこみかしこみも もうす」

 沙羅のよく通る声が口上を述べる。洞窟の外にまでひびくような大きさだけど、心地よい、聞き入ってしまうほどのとても綺麗な声だった。
 がらっ。祭壇の奥の扉が開けられた。巫女装束姿の沙羅を先頭に、十人くらいのお姉さんが並んでいる。見たことのある、大祇中学校の生徒さんだ。みんな大皿を持っていて、片側に座っている一人一人のお膳の前で、焼かれた何かの肉を長いおはしで取り分け、乗せていく。

『きみ、愛しい、きみ』
「ベルっ?」

 また、ベルの声がした。

「どしたん?」

 美玲が聞いてくるが、ゆうは答えなかった。
 皿に乗せられた不思議な形をしている肉を見る。牛タン……のように見える。

『なるべく美味しそうなやつあげるからさ』

 あの日の沙羅の言葉が蘇る。