テレビなんかで見たお祭りは、屋台や出店が出ていて、観光客がたくさん押しかけて、華やかな雰囲気満点のはずだ。十二年に一度の珍しい祭りのはずなのに、出店どころか提灯のひとつも無い。なによりこの村の外から来たであろう人たちはみんな、様子がおかしい。ホームレスにしか見えないおじいさんにおばあさん。目に生気のない、都会の女子高生──みな異常にスカートが短くて、手にたくさんの注射のあとが見える──たち。他にも、競馬の新聞を片手に耳に赤えんぴつを指したおじさん。ガラの悪いチンピラみたいな人たち。みんな一様に神社の方へふらふらと歩いていく。
 ばったり倒れたおじいさんは、手足をもぞもぞさせた。

「いい匂いだあ……なあ、嬢ちゃん、いい匂いだなあ……腹減ったよお……」
「なに、なんなのよ、これぇ」

 沙羅は泣きそうになりながらゆうにすがった、その時。おかしなおかしな人たちにまぎれて。……長い金髪の後ろ姿が見えた。

「ベル!」
「ゆうちゃん!」

 沙羅は駆け出すゆうを呼び止めた。けれどゆうはベル、ベル。そればかり叫びながら、気がついたら幼なじみの手を振り払っていた。

 ……