相原ゆうは、自分の部屋で飛び起きる。ずきん。右肩がひどく傷んだ。

「いったたた……」
「ゆうちゃん! ……おばさん、おばさん! ゆうちゃんがっ! ……大丈夫? 覚えてる? おおかみにかまれたんだよ」
「……沙羅?」

 沙羅がいるのがわかって、慌てて帽子をかぶった。

「ゆうちゃんっ」

 ばたばたとお母さんが入ってきた。
 おでこに手を当てて、それから服をずらして肩を見た。

「……ふう。まずは、大丈夫そうね。……のど、かわいたでしょ」

 はい。
 ことん、と、ゆうの部屋の畳の上の小さなテーブルに、トマトジュースを置いた。

「ああ、あのね、お母さん。僕、たぶんそれ飲めな」
「飲めるわ」
「……え?」
「それなら、飲めるの」

 お母さんはにっこりした笑顔で、じぃっとゆうだけを見ている少女に、声をかけた。

「はい」
「ちょっとだけ、下行っててくれる? ……おねがい」
「え……はい」

 とんとん、と軽やかな足取りが遠ざかる。