真っ暗だ。真っ暗な所で、ゆうは座っている。どうしてここに居るのかわからない。

(たしか……沙羅と美玲と帰っていて……そうだ、ベルだ。大好きなベルを見かけたんだ。それで……それで? たしか、おばあちゃんがおおかみになって……そうか、かまれたんだ。じゃあ……僕は……死んだの?)
「死んでないよ」
「ベルっ!」

 立ち上がって振り返って叫ぶ。ゆうが心の底から愛するその女の子は、背中を向けてそこに立っていた。でも、ベルは暗やみでも光る金の髪をたなびかせ、ゆうからはなれていってしまう。

「待って! 行かないで!」

 ぴたりと足を止めた。

「愛しいきみ。きみは死なないよ。私が守ってあげているからね」
「ねえ、ベル! 僕も、僕も連れて行ってよ!」

 すると、背中を向けたまま右手を真っ直ぐ横に伸ばし、指を指した。

「呼んでるよ、きみのこと」
「え?」
「ゆうちゃん、わかる? お母さんだよ、わかる?」

 ……