ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

「ゆーくん! ゆーくん! どうしよ、ボク、どうしよっ?」
「美玲! おばさん呼んできてっ!」
「沙羅ちゃんはっ?」
「お守り持ってきた! やってみる!」
「わ、わかった!」
「こっちだよ、こっちみて! お、おおかみよ ちいさきおおかみのみたまを ゆるしたまえ……おおかみよ ちいさきおおかみのみたまを ゆるしたまえ! おおかみよ ちいさきおおかみのみたまを ゆるしたまえ……っ! や、やった……行った……ゆうちゃん、ねえ、ゆうちゃん! 目、目開けてよお……ゆうちゃん……」

 ……

「おばさん連れてきたよ!」
「ぐすっ……みれい……ぐすっ……ゆうちゃんが……」
「ゆうちゃん! ゆうちゃん! ……沙羅ちゃん、かまれたのは? かまれたのはいつっ?」
「ぐすっ……ひっく……」
「沙羅ちゃん! 落ち着いて。教えて。そう。落ち着いて。……そう。いい子ね……いい? かまれたのはいつなの?」
「じゅ、十分くらい……まえ……」
「落ち着いて、落ち着くのよ私……まずい、まずいわ、新月の力が失われちゃう……百十九は……だめね、間に合わない……」
「……」
「あ、もしもし、上町の相原です。宮司の樫田さんを急ぎで……はい、お願いします」
「……」
「……樫田さんですかっ? ……ゆうが、息子がかまれて……あ、いえ、違うんです、息子は……はい、実は新月の力が……はい、その……その通りです……はい、はい……それは……はい、はい……それについては……それについては。あとで、あとでお話します……ですから」
「おばさん、おばさん! ゆーくんが!」
「……ゆうちゃんっ? ゆうちゃんなのっ? ……すいません、今のは……はい、意識を取り戻しました。……どうか、今のはどうか、ご内密に……はい……すいませんでした……はい、それでは……はい……」
「ゆうちゃん、わかる? お母さんだよ、わかる? ゆうちゃん」

 ……