令和六年七月十九日、金曜日。
 終業式の日の、お日さまの容赦のない暑い暑いカンカン照りの帰り道。明日からなつやすみだ。沙羅が、クラスイチのオタク少女、美玲に言った。

「最近増えたね、おおかみ」
「そだよね、沙羅ちゃんもこの前遭ったんだっけ」
「そうそう。危なかった」

 沙羅は、ゆうがもし居なかったらと思い返したのか、青い顔をしている。

「それよりさ、今週のダッシュ! 『チェーンソー・ヤイバ』読んだ? めっちゃカッコよかったよね! ボク感動しちゃったよぉ」

 はあ……沙羅はため息をついた。美玲が「チェーンソー・ヤイバ」の話をし出すと止まらない。沙羅もゆうも読んだことも無いのに、ずーっとしゃべり続ける。特に主人公が大好きで、火がつくと止まらない。怖くないのか不思議だ。だって今日出席したのは。ここにいる三人とみかをあわせた四人だけだったんだから。

『いよいよ明後日は大祇祭。みなさん、かぜをひいて出られないなんてことは無しですよー』

 あゆみ先生は、相変わらずおっとりした口調で九人のクラスメイトに呼びかけるように話した。四人に。