五時間目が終わった、帰り道。角田屋あたりまで続く田んぼ道を、翔と二人で歩いていた。太陽がぎんぎんに照りつけていて、さえぎるものがなにも無い田んぼの真ん中の道は、歩くだけで汗がびっしょりになる。それに加えて今日はなんだか田んぼを見てるとぞわっとする。カエルの声と遠くのセミの声が合唱のように交互に鳴り響いている。

「めっちゃぞわっとしたな」

 びっくりした。心を読まれたかと思った。

「……あゆみ先生?」
「お残しなんて見逃してくれてたのにな」

 でも、そうでないとわかると、力が抜けた。

「……そうだよね。なんでかな?」
「おれ、きな粉パン食ったのまずかったかな」
「……ちがうと思う」
「ま、アイス買ってやるから元気だせよ、な」

 全然見当はずれなことを言って頭をかく彼を見ていると、ため息が自然と出た。だけど、気持ちはうれしかった。

「ばあちゃん、ソーダ二本!」

 ぺりぺりと、翔がとうめいなセロハンをはいで、ぱくりとかじる。

「うんめー! やっぱ暑い日はこれだよな! ……どした?」

 まただ……舐め方がわからない。

「どーしたんだよー?」
「ごめん、ちょっと……いいや、要らない」
「は? もう買っちゃったんだけど」
「ごめんって。アイスの気分じゃなかったみたい」
「もう、あいつみたいになってんじゃんか」

 びくん、とゆうは身体をこわばらせた。

「そういえば、あいつ、どこ行ったんだろ。今日、来なかったべ?」

 ベルの行方も……ご飯が食べれなかったことも……カガミに写らなかったことも、田んぼを見ていてぞわぞわしたことも。ゆうは、何ひとつとして答えることができなかった。