「食べねえの? それ」
七月八日、月曜日。みんな大好き、給食の時間。今日の献立は、白身魚のフライ、たまごスープ、もやしナムル、きな粉パン。
ゆうは、一口手をつけた魚のフライの前で固まっている。ずっとくちゃくちゃかんでいるが、飲み込めない。それを全部を食べ終わった翔に見られた。延々と口の中に残り続ける魚のフライがあるせいで、何も言えない。
「んー、んー」
「そーかそーか、ではおれが食ってやろう」
そう言われて、好物だったきな粉パンは彼の物になってしまった。けれど、ゆうは今それどころでは無い。かむことはできるのに、飲み込めない……まるで飲み込み方を忘れてしまったかのよう。仕方ないので、逃げるように教室を飛び出して、男子トイレにかけこんで、ぺっ、と魚のフライを吐いた。
洗面台に立つ。どうにも口の中が気持ちわるいから、水を含んですすいだ。そういえば、昨日の晩ごはんも同じことがあった。大好きなマグロのお刺身が飲み込めなくて、延々とかんでいた。あの時も、トイレにかけこんだ。
かみ合わせでも悪いのかな……そう思ってカガミを見て、あ然とする。……確かに、今、カガミの前に立っている……それなのに。
自分が写っていない。
いっしゅん、これはただのガラスで、向こう側が見えているだけなのかとも思ったけれど、向こう側なんてそもそもないし、反対側の男子の便器は写っている。ゆうは男子トイレでひとり、途方にくれた。
……
七月八日、月曜日。みんな大好き、給食の時間。今日の献立は、白身魚のフライ、たまごスープ、もやしナムル、きな粉パン。
ゆうは、一口手をつけた魚のフライの前で固まっている。ずっとくちゃくちゃかんでいるが、飲み込めない。それを全部を食べ終わった翔に見られた。延々と口の中に残り続ける魚のフライがあるせいで、何も言えない。
「んー、んー」
「そーかそーか、ではおれが食ってやろう」
そう言われて、好物だったきな粉パンは彼の物になってしまった。けれど、ゆうは今それどころでは無い。かむことはできるのに、飲み込めない……まるで飲み込み方を忘れてしまったかのよう。仕方ないので、逃げるように教室を飛び出して、男子トイレにかけこんで、ぺっ、と魚のフライを吐いた。
洗面台に立つ。どうにも口の中が気持ちわるいから、水を含んですすいだ。そういえば、昨日の晩ごはんも同じことがあった。大好きなマグロのお刺身が飲み込めなくて、延々とかんでいた。あの時も、トイレにかけこんだ。
かみ合わせでも悪いのかな……そう思ってカガミを見て、あ然とする。……確かに、今、カガミの前に立っている……それなのに。
自分が写っていない。
いっしゅん、これはただのガラスで、向こう側が見えているだけなのかとも思ったけれど、向こう側なんてそもそもないし、反対側の男子の便器は写っている。ゆうは男子トイレでひとり、途方にくれた。
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