「ゆうちゃん……」

『今日は、新しいお友達が、このクラスに入ることになりました』
『たんけんいくひとー!』
『ゆうちゃんにはなるべく美味しそうなやつあげるからさ……だから、いちばん最初に並んでよ。おねがい』
『なんも言わないで! めっちゃ恥ずかしいの! いま!』
『……がっかりしたろ。僕が……女で』
『それでもいい! それでも、いい。あたしは……』
『ゆうちゃんが、好き……』

 蓋をしていたあの頃の思い出が、洪水のように蘇る。そしてとめどなくまぶたから溢れて、涙になって零れつづけた。
 どうしてあの時、さよならと言わなかったんだろう。どうして夢に出るゆうちゃんに会いに行かなかったんだろう。どうして。どうして……

「ごめんなさい、ごめんなさいゆうちゃん」

「泣かないで」

 ハッと振り返る。
 金色に輝く腰まである長い髪。空の色を切り取った青い瞳。大好きなゆうちゃんが微笑んでいる。

「泣かないで、沙羅。僕は、ずっと君のそばにいる。ずっと」

 ある寒い冬の午後、崩れた土の上で。
 沙羅は確かに、あの日のゆうに。

 会ったはずなのだった。

【完】