十三年がたった頃。困った事態が起きた。ある満月の夜。村人たちが一斉におおかみになったまま、暴れ始め、戻らない。妹がなだめるが、手に負えない。
 途方に暮れたその時、迷い込んだヒトがいた。姉はそのヒトを瞬間的に殺すが、殺してから新月のモノだと気づく。誰にも見られずに処分したはずなのだが、おおかみたちがその亡骸のにおいに反応して一斉に食べ始めた。そして、食べ終わったモノから、ヒトに戻っていった。

(……これだ)

 姉は確信する。これが私の存在意義だと。

 神社を作らせた。あの洞窟の中に本殿を造り、祭壇奥の階段と自分の屋敷を繋いだ。そして夜な夜な本殿から村の外へ出た。そして十二年に一度、祭りと称して新月のモノの肉を振舞った。村の外からも消えてもいいヒト──罪人や底辺のヒトたち──をさらって集めて村人へ食べさせた。
 ヒトをひとり宮司をさせた。宮司までおおかみになってしまっては困るからだ。村人も、全員をおおかみにはしなかった。彼らには村の維持存続のための活動や、新月のモノ探索のため村の外へ派遣した。新月が見つかれば姉が出向き、拉致監禁の上、祭りの供物にした。