大祇村は、姉妹が訪れた時には、無人の廃村になっていた。姉妹は考える。どうやって「家族」を増やそうかと。
 だがそう時間が経たずに、意外な方法で「殖やす」ことに成功する。追ってきた政府軍や狩人達を返り討ちにするだけなのだ。一度でも噛みつけばそのモノはおおかみになる。おおかみにさえしてしまえば、こちらの都合のいいように動いてくれる。気がついた頃には村がひとつ出来ていた。
 村に子供も生まれた。たくさん生まれた。
 妹は、教師として村で居場所を見つけた。元々、遊郭にいた時から、小柄で明るく、愛嬌のある見た目だった。おおかみとなる子供たちに、明るい未来をあたえる、満月そのものだった。
 姉は、火傷のこともあり誰にも姿を見せなかった。あの狼の洞窟の真上に立派な西洋風の屋敷を造らせ、普段はそこに身を隠し、人目から逃れた。そして夜な夜な村に迷い込んだニンゲンをおおかみに変えたり、餌にしてみなに振舞ったりしていた。
 明るく、日向を歩く妹。暗く、人目をはばかって生きる姉。

(満月と、新月のようね……)

 姉は独りごちた。

 ……