姉妹が吉原のトップに上り詰めてからしばらく経ったある日。ある人物が会いたいと遊郭を訪れた。諸大名すら会いたがるトップクラスの花魁。競争率も半端ではなかったが、なんとその人物は大名の二倍の金を一括で包んできた。
 双子の前にやってきたその人物は、男にも女にも見えた。狼のころから鼻の利いた二人でも、どうしてか判別がつかなかった。

「お会いしたかったよ、お二人さん」

 底知れぬ恐ろしさを含んだ声で、そのモノは声を放った。その日は「朔」の日。新月の日だった。

 どういうふうにしたのか、記憶が無い。妹は、ただ、姉にすがって震えていた。姉は自分の右手を見る。手は指が大きく開き、二倍位に伸びていて、五寸ほどの爪が付いている。その爪の先からは、血が滴っている。
 そして。目の前には首のないそのモノが転がっていた。なぜか、とても美味しそうに見えた。姉妹はそのモノの肉を、残らずたいらげた。

 ……