新月の始祖、ベルベッチカ・リリヰは敗れた。

「大丈夫かい? 沙羅ちゃん」

 五年生の教室。沙羅ちゃんは、生気のない目をしたまま、ベルベッチカの後ろに立っている。その前で、ベルベッチカ・リリヰは身体を起こす。自身の下半身を見る。

 身体は横一文字に切断され、下半身とは五十センチほど離れていた。

 二頭の──蒼太と航の──おおかみは倒した。
 あゆみ先生も首を落とし滅した。
 勝った、はずだった。何年も十数年続いた因縁に、ケリをつけたはずだった。
 しかし。目の前に、オリジンがもう一人いる。
 くっ。まさかこんなことが。ベルベッチカは頭の中で悪態をついた。突然の乱入に対応できないまま、一閃をもろに受けてしまったのだ。切り札の拳銃は、二メートル程後方に落ちている。とても届かないし、銀の弾丸は使ってしまった。