ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

 社務所に神速で戻った。
 おじいさんがツテで用意した拳銃を取り、銀の弾丸を装填して、残りの五発に銀メッキの弾丸を装填した。銀の弾丸が、一発目に来るように弾の順序を整えた。
 いつもの白ワンピースにはポケットがないことに気づく。おじいちゃんの部屋を見渡すと、沙羅ちゃんの学校の制服がある。それに袖を通した。やや大きいけれど、問題ない。グレーのジャンパースカートの制服。着るのは何ヶ月ぶりだろう。ほんの数週間しか着ていないはずなのに、とても懐かしい。スカートのウエストベルトに、拳銃を差し込んだ。
 社務所の事務室に居た沙羅ちゃんのおじいさんを呼び、孫娘がさらわれたと伝える。とても驚いて声を大きくするが、冷静に努めた。

「私が、取り戻してくる。……大丈夫。この村の大半のおおかみを食べてきた。私の目算が正しければ、五分以上に立ち回れるはずだ。銀の弾丸も持った。どうかご安心を」
「あ、ああ……どうか、どうか……沙羅をよろしくお願いするよ」
「すまないね……私の因縁に、お孫さんを巻き込んでしまって。……沙羅ちゃんは死を賭してでも必ず取り戻す。最善を尽くすよ。おじいさんは、どうか、この結界の中で、待っていて欲しい」

 そう告げると、ベルベッチカは社務所を出た。

(新月の目、再起動……わかるぞ、オリジン。お前が残したにおいが……)
「待っていろ、今日こそケリをつけてやる」

 そうつぶやくと一歩で三十メートル先の階段まで飛び、次の一歩で階段を全て飛び越え、神社前の道に着地した。そして、百メートルを二秒で駆け抜ける脚で、学校を目指した。