新月の耳が悲鳴を捉えた。沙羅ちゃんの声をほんの僅かだがたしかに聞きとった。たしかに、境内に続く階段のいちばん下に座っていた。ベルベッチカ・リリヰがそこに駆けつけるまで、三秒もかかっていないはずだ。さすがのオリジンも、痕跡を消しきれていない。においが、残っている。
(新月の目起動……追跡開始)
沙羅ちゃんが声を掛けられている。
「さ……しい……」
(寂しい? か……)
オリジンがヒトをおおかみに引き込む時、よく使う言葉だ。実際にそう言っているわけではない。孤独で惹き付けられやすいヒトには、都合のいい言葉に変換されてそう聞こえるのだ。
(一秒後、みぞおちに打撃……肋骨が一本骨折。五メートルの高さへ飛ばされる。同時に跳躍。上空で沙羅ちゃんの首筋を掴む)
ベルベッチカは隣の太いケヤキを見る。
(首を掴むと同時にケヤキの幹を蹴る。そのまま、階段を全て飛ばして階段上の道へ着地……追跡ロスト。新月の目、起動終了)
間に合わない訳だ。声をかけてから、神社の外に行くまで二秒しかかかっていない。三秒後に駆けつけた時には、一キロは離れていただろう。でも、においをたどれば、追跡できる。オリジンが本当にあゆみ先生なら……学校だろう。
(新月の目起動……追跡開始)
沙羅ちゃんが声を掛けられている。
「さ……しい……」
(寂しい? か……)
オリジンがヒトをおおかみに引き込む時、よく使う言葉だ。実際にそう言っているわけではない。孤独で惹き付けられやすいヒトには、都合のいい言葉に変換されてそう聞こえるのだ。
(一秒後、みぞおちに打撃……肋骨が一本骨折。五メートルの高さへ飛ばされる。同時に跳躍。上空で沙羅ちゃんの首筋を掴む)
ベルベッチカは隣の太いケヤキを見る。
(首を掴むと同時にケヤキの幹を蹴る。そのまま、階段を全て飛ばして階段上の道へ着地……追跡ロスト。新月の目、起動終了)
間に合わない訳だ。声をかけてから、神社の外に行くまで二秒しかかかっていない。三秒後に駆けつけた時には、一キロは離れていただろう。でも、においをたどれば、追跡できる。オリジンが本当にあゆみ先生なら……学校だろう。

