ざくっ。雨粒がお腹を裂く。腸が垂れ下がる。
 ぎああっ!
 思わず悲鳴をあげる。

「いつも腸から食べてくれてたよね」
「次は舌ね」

 声のする度、身体中を雨粒が引き裂く。

「ぎゃああ、止めて、止めてぇ」

 雨の降りしきる田舎の道で。ゆうは原型を留めなくなるまで切り刻まれ、アスファルトの上のただの赤い染みになった。

 ……

「うわあっ!」

 おじいちゃんの社務所でゆうは気が付く。おなかを触る。内臓も出ていないし、舌もちゃんとある。首には掛けた覚えのないタオルがある。薄暗い部屋の中で、ベルが語り掛けてきた。

『気を失ったから借りたよ。……水に、吸ったいのちの声を聴いたんだね。最初にいうべきだった』

 ゆうは慌てて窓から離れて、膝を抱いた。
 大丈夫かい。愛しい母が頭の中で呼ぶ。けれど、ゆうは動かない。まるで手負いの獣が巣穴に篭ってじっと傷が癒えるのを待っているかのように。

 ゆうの心は、手負いそのものだった。