「はいはーい、みんな、静かに。……静かにー」
令和六年六月三日、月曜日。大祇小学校、五年一組。朝の会。
担任の小林あゆみ先生は、にぎやかにおしゃべりをする九人に向かって呼びかける。二十七歳、まだけっこんしてない。五年生になって、それまで六年生の担任だったあゆみ先生がゆうのクラスの担任になったと知って、ゆうは心の中でガッツポーズをした。百四十五センチのゆうと対して変わらないくらい小柄なのに、胸はおっきくて、肩まである髪をゆるめにひとつに結んだ、子供みたいな顔の優しい笑顔のみんなのアイドル。おっとりしていて優しくて、男女問わずみんな、彼女が大好きなのだ。
「けっこんしてください!」
野球少年みたいな、ぼうず頭でゆうより背の高いとなりの家の翔が、五年生の初めの日にでかい声でそうこくはくして、クラス中の笑いものになった。くそう、ライバルがいたかと、ゆうは心の中で悔しがった。
そんなあゆみ先生が、みんなの前に立って注目を集める。
「今日は、新しいお友達が、このクラスに入ることになりました」
九人のクラスが一瞬だけザワついた。転校生なんて、少年マンガの中だけの出来事だと思っていたから、翔もゆうを見て「まじで」とちっちゃな声で漏らした。
「へるべさん」
かたかたかたかた、と教室の白い金属製のドアがやけにゆっくり開いた。
「大丈夫ですよ。入ってらっしゃい」
令和六年六月三日、月曜日。大祇小学校、五年一組。朝の会。
担任の小林あゆみ先生は、にぎやかにおしゃべりをする九人に向かって呼びかける。二十七歳、まだけっこんしてない。五年生になって、それまで六年生の担任だったあゆみ先生がゆうのクラスの担任になったと知って、ゆうは心の中でガッツポーズをした。百四十五センチのゆうと対して変わらないくらい小柄なのに、胸はおっきくて、肩まである髪をゆるめにひとつに結んだ、子供みたいな顔の優しい笑顔のみんなのアイドル。おっとりしていて優しくて、男女問わずみんな、彼女が大好きなのだ。
「けっこんしてください!」
野球少年みたいな、ぼうず頭でゆうより背の高いとなりの家の翔が、五年生の初めの日にでかい声でそうこくはくして、クラス中の笑いものになった。くそう、ライバルがいたかと、ゆうは心の中で悔しがった。
そんなあゆみ先生が、みんなの前に立って注目を集める。
「今日は、新しいお友達が、このクラスに入ることになりました」
九人のクラスが一瞬だけザワついた。転校生なんて、少年マンガの中だけの出来事だと思っていたから、翔もゆうを見て「まじで」とちっちゃな声で漏らした。
「へるべさん」
かたかたかたかた、と教室の白い金属製のドアがやけにゆっくり開いた。
「大丈夫ですよ。入ってらっしゃい」