ゆうは社務所のおじいちゃんの部屋で膝を抱えている。外は雨だ。秋雨の冷たい雨粒が窓ガラスに当たって音を立てている。部屋は暗い。それは外の天気の所為もあるけれど、蛍光灯を消して息をひそめているからというのが大きい。ここは安全な結界の内側だけれど、ゆうはじいっと窓に背を向けて動かない。大丈夫かい。愛しい母が頭の中で呼ぶ。けれど、ゆうは動かない。まるで手負いの獣が巣穴に篭ってじっと傷が癒えるのを待っているかのように。
いや、動けないのだ。ちょっとでも窓のそばに寄ると聞こえてしまう。食べた命の、囁きが。
……
今日は航を食べに行くと決めていた。ベルともそう話した。でも一日曇りと報じた予報は外れて、下町に向かう途中で雨に降られた。思えばここ最近。特にベルに始祖に目覚めさせてもらってから。まとまった雨は降っていなかった。いつも晴れていて、九月の終わりまで暑い日もあった。
だから、気付かなかった。雨にすら反応するほど新月の力が先鋭化していることに。
いや、動けないのだ。ちょっとでも窓のそばに寄ると聞こえてしまう。食べた命の、囁きが。
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今日は航を食べに行くと決めていた。ベルともそう話した。でも一日曇りと報じた予報は外れて、下町に向かう途中で雨に降られた。思えばここ最近。特にベルに始祖に目覚めさせてもらってから。まとまった雨は降っていなかった。いつも晴れていて、九月の終わりまで暑い日もあった。
だから、気付かなかった。雨にすら反応するほど新月の力が先鋭化していることに。

