『相原ちゃん……大祇祭。どうだった?』

 ……そうだ。忘れ物クイーンは、思い出した。
 大祇祭で、何かが起きて人々がおおかみに食い尽くされたことを。そしてそのことを話した後に起こったことを。二人の元へ来た、そのヒトを。

(伝えなきゃ! 相原ちゃんに! この階段を降りた先にいる!)

 なんだか鼻がとっても良くて、どういう訳か確信を持てた。

(早く、早く! 私がまた、忘れちゃう前に──!)

 はっはっ。みかは、おおかみみたいに息を荒くした。

「相原ちゃん! 相原ちゃん、どこ?」

 おおかみが遠吠えをあげるように、呼んだ。

 ……

「あらあら、みかさん」

 振り返ると、どうしてかあゆみ先生が階段を下りてきて声をかけてきた。

「おうちは下町でしょう? どうしてこんな所にいるのかしら?」

 ……あの日と、同じ、顔をして。