いつも、みかの「なんだっけ」に、みんな笑ってくれる。
 消しゴムを忘れました。教科書を忘れました。体育着を忘れました。ランドセル忘れましたの時は、九人全員大爆笑だった。

「あはは。そうだよね、へんだよね、私」

 みかもつられて笑った。

(でも。このクラス、もう少しヒトが居た気がするんだけど……なんだっけ)

 ……

 ある十月の帰り道。蒼太と航が先に帰った。
 忘れ物クイーンのみかは学校前の丁字路を下町に向けて真っ直ぐ進まないで、神社の方へ右にまがった。思い出そうと必死に考えているうちに、なぜか自然に神社の方へ足を進めていた。
 あれえ。鳥居への下り階段の前に着いて、やっと道を間違えていたことに気がついた。階段を降りるまえに、手を合わせた。

(神様。何でもかんでも忘れちゃう私に、大切なことを思い出すチャンスをください……)

 そして、階段を下った、その時。