ゆうは背を向けたまま立ち上がって、怒鳴った。

「だからなんだってんだよ! 僕は男の子だ! 女の子のベルとは違う! 男の子は勇敢に戦って、好きな女の子を守って死ぬんだ!」
「きみは女の子だ」

 そう言われる度、ゆうの中で何かが爆発しそうになる。

「違う、違う! 僕は、男だ! 男は命だって惜しくないんだ!」
「女の子だ」

 ゆうはベルの方を向いて、涙をまきちらして喚いた。

「ベルまで、ベルまでなんだよ! 僕は男だって、信じてくれないの!」
「女の子なんだよ。小学五年生の」

「好きで生まれたんじゃない! 好きで女になったんじゃない! ベルがそう産んだんじゃないかっ! 全部ベルのせいだっ!」

 言って、しまった。自分の産みの親に対して。いちばんぶつけてはいけない怒りを。

「……そうだね。私が産んだ。愛しい愛しいきみを、確かに産んだ。石炭を積んだ貨車の上で」
「どうして僕を男に産んでくれなかったの? どうして僕は女の子なのっ」
「……そうだね。妊娠期間中にストレスを感じすぎたのかもしれないし、私の身体の小ささからくる未発達のせいかもしれない。私のせいだね。愛しいきみ。本当にごめんよ」