ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

 そう言うと、ふっ、と息を吸い込んで、顔をしかめる。苦しそうな顔をした後、しゅうしゅうと、傷口から白い煙があがり始めた。

「んっ……」

 ばきん、と刺さった枝が折れた。そしてみるみる傷口が塞がっていく。
 沙羅が見入る。九十秒程で傷は塞がった。

「ふう、なんとか治めたよ」

 よかったあ……幼なじみの少女は吐息を漏らした。

「お父さん、ゆうくんにあとで栄養のあるモノをたくさん食べさせてあげておくれ。傷は治ったけれど、体力が最低限にまで落ちている」
「あ、ああ、わかった。……それより、体の中に残った枝はどうした?」
「問題ないよ。『消化』している」

 ベルベッチカは、にこりと笑った。

「さて……ゆうくんと見たオリジンについて、話そうか」

 ……

 私が見たのは、蒼太くんだったおおかみを誘い出して、新月の虜にして、拳銃でトドメをさそうとしたその時だった。
 オリジンの声がした。が、銀の弾丸を持っておらず戦力差も歴然。よって私はゆうくんに逃げるように説得したが、ゆうくんはオリジンの実体を見極めると言って聞かなかった。そして、現れたオリジンは……あゆみ先生だった。