沙羅の泣きそうな声だ。

「おじいちゃん、助かるのっ」
「わからん。始祖と交戦したようだ」
「角田屋のところで倒れているのを保護したんです」

 沙羅のおじいちゃんとお父さんが話している声がする。ゆうはもう満身創痍で動けない。

『愛しいきみ。身体を借りるよ。話した内容は後で教えてあげる』

 大好きなベルの声が聞こえたあと……ぷつり、意識が途絶えた。

「ベルベッチカだよ。身体を借りている」

 ゆうの目がぱちりと開いて、三人に名乗った。
 綺麗に整えられた和室。心地よいお香の香り。どうやら、沙羅のおじいちゃんの部屋のようだ。

「ベルベッチカちゃん! ゆうちゃんは助かるのっ?」
「私が表に出られる位には弱っている。刺さった枝の二本は内臓を傷つけていないが、一本が肺を貫通している。ヒトなら、助からない」

 そんな、と沙羅が悲鳴を上げて口を押える。

「待て。ヒトなら、と言ったぞ」

 おじいちゃんが制する。

「そうだ。ゆうくんには新月の始祖の力がある。再生能力もただの新月とは違う。今から『再生』させるので、一、二分待って欲しい」