『二十メートル。急げ、きみ』
「……エレオノーラ……」
(さっきは流暢にしゃべってたのに、なんで離れるとエレオノーラしか言わないんだよ)
『あれはね、本当はなにも声を発してないんだ。オリジンの私たちを捕捉する気配が、私たちにはそう聞こえているだけなんだ。君が見たのもね、あゆみ先生とは限らない。見た記憶を改ざんされている可能性がある。本当はこどもかもしれないし、おじいさんかもしれない』
もはや人知すら超えた敵の万能さに、痛い以上に言葉が出ない。
『可能なんだよ、オリジンなら……って、おい、大丈夫かっ』
ゆうはばったりと倒れた。角田屋を過ぎた、田んぼの真ん中だ。
『きみ、愛しいきみ、オリジンが接近している。がんばれ』
(もう……一歩も……動けない……)
ちりんちりん。
「そこの子、どうした……ゆうかっ? どうした? ゆうっ」
ああ……ゆうは心の底から安堵した。だって、学校の先生が来てくれたから。だって、その先生は、お父さんだったから。
いつの間にかオリジンの気配は消えていた。
ゆうの意識も、泥の中に沈んでいった。
「しずか……」
ゆうを背負ったお父さんが、そう言ったように聞こえた。
「……エレオノーラ……」
(さっきは流暢にしゃべってたのに、なんで離れるとエレオノーラしか言わないんだよ)
『あれはね、本当はなにも声を発してないんだ。オリジンの私たちを捕捉する気配が、私たちにはそう聞こえているだけなんだ。君が見たのもね、あゆみ先生とは限らない。見た記憶を改ざんされている可能性がある。本当はこどもかもしれないし、おじいさんかもしれない』
もはや人知すら超えた敵の万能さに、痛い以上に言葉が出ない。
『可能なんだよ、オリジンなら……って、おい、大丈夫かっ』
ゆうはばったりと倒れた。角田屋を過ぎた、田んぼの真ん中だ。
『きみ、愛しいきみ、オリジンが接近している。がんばれ』
(もう……一歩も……動けない……)
ちりんちりん。
「そこの子、どうした……ゆうかっ? どうした? ゆうっ」
ああ……ゆうは心の底から安堵した。だって、学校の先生が来てくれたから。だって、その先生は、お父さんだったから。
いつの間にかオリジンの気配は消えていた。
ゆうの意識も、泥の中に沈んでいった。
「しずか……」
ゆうを背負ったお父さんが、そう言ったように聞こえた。

