がっしゃーん……
 一階のドアが吹き飛んでへしゃげる音がした。
 ぐるるる、新月の魔力が解けた、蒼太だったおおかみが唸る。
 ゆうは今、パジャマで、しかも上半身は裸だ。顔の三十センチ前で顔の二倍はある大きさの口からヨダレを垂らす魔獣を前に、ゆうは状況が飲み込めない。
 ハッとする。さっきからずっと、ベルが頭の中で呼んでいたのだ。

『ゆう! ゆうくん! オリジンが数メートル先にいるっ! 今は逃げろ!』

 ぎしっ……ぎしっ……何かがゆっくりと階段を登っている。この部屋は階段のすぐ目の前だ。あと数歩でふすまが開いてオリジンの姿が見えるだろう。

「……オリジンが誰か、確かめる」

 ゆうの言葉に、母は声を張り上げた。

『バカを言うなっ! 確かめられる距離まで接近されたら、生きて帰れないぞっ! それに今日は銀の弾丸を持ってきていない。出直すんだ!』
「おおかみは、僕が見てるから動けない。それに銀メッキの弾ならある」