こうさか亭の看板娘、三つ編みの香坂結花は、相原くんが大好きだ。幼稚園から相原くんに接してるこどもはみな、暗黙の了解で相原くんを男の子として扱っている。体は女の子でも、心は男の子。そういう変わった子なのは、知っているし理解している。
 けれど、結花は女の子でもいいと考えている。ううん、むしろ、女の子の方がいい。大人しい航はともかく、翔や蒼太はいかにもな男の子で、乱暴で声が大きくてガサツで、大っ嫌いだった。
 結花は女の子だと知っているけれど、「相原くん」という呼び方にこだわった。自分が女の子が好きだと、分からせないためだ。
 結花は、女の子しか好きになれない女の子だった。

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