角田屋の前に着いた。

「ばあちゃん、ソーダ二本! ……ほら、おごってやるからさ。食えよ」

 ぺりぺりと、セロハンをはがした。翔の、精一杯の友達を気遣う気持ちの表明だった。

「大丈夫だよ、茜」

 そう声をかけると、茜はアイスを受け取った。

「おれ、茜の味方だからさ。怖くなったらまたアイス、おごってやるからさ……だから……泣くなよ……」

 彼女は、泣いていることに気がついていなかった。

「しょーちゃん……しょーちゃん……! アタシ……アタシ……」

 えええん……翔にすがりついてアイスを持ちながら、茜は大粒の涙をこぼした。溶けたアイスが翔のTシャツに付いた。でもどうしてか、そんなこと気にならなかった。
 翔は、泣いてる女の子の肩を寄せる。とても暖かで、柔らかくて。いい、匂いがした。