そこから先は、美玲はあまりよく覚えていない。「撃ち抜かれた」頭から、おおかみが出てきた。……ような気がする。右目を潰されたおおかみはとても怒っていて、ゆーくんに襲いかかった。でも、片目の見えないおおかみの牙は、ことごとく空振った。
 美玲は暴れた。大好きだったチェーンソー・ヤイバのフィギュアも、大好きだったセラプリのカレンダーも。全部壊しながら、六畳間の洋室で、暴れ狂った。
 がぶり、かんだ。

(やった、捕まえた!)

 ……けれどそれは、別の女の子の腕だった。名前、なんていったっけ。一学期の終わりにだけ居た。ベル……なんとかさんだ。

『今だ、愛しいきみ!』

 なんとかさんの声が響いた……隙が生まれた。

(ゆーくん、ボクとチェーンソー・ヤイバの話するの、好きって言ってくれたよね。ゆーくん、ボクのこと、好きって、言ってくれたよね。ボクね、幼稚園の頃からね、あのね)

 どぼっ!

「ぎゃぉぉおおんっ」
(あは。幼稚園の時とおんなじ。ゆーくんに心臓、射抜かれちゃった……)

 ……