(しまった! ボクったら、いつもこうなんだ。大好きなものの話になるといつもこうで……)
「楽しいね」

 あれ。いつもみたいにため息をつかない。

「美玲のチェーンソー・ヤイバのお話」

 本当にいいのだろうか。てっきり大失敗かと思っていたから、ゆーくんの笑顔は予想外だった。

「そ、そかな……えへへ……うん、大好きなんだ」
「僕も好きだったよ。美玲のお話が」
(……? だった? ってなんだろ?)

 ゆーくんはいつもの不機嫌な顔じゃない。とてもにこにこ、笑っている。

(ま、まあ、この際、細かいことは気にしない。今こそ言うんだ。今こそ……)

 ん? 目の前にゆーくんの顔がある。じいっと、美玲を見つめている。

(あれ? 近い、顔、近いよお……これって……これって。キス……ってやつ……?)
「んー」

 美玲は目をつぶった。

(ああ、ボクのファーストキス……まさか、今日なんて……思わなかったよお……でも……ああ、幸せだなあ。……幸せだなあ)

 ……

 ぴたり、と何か冷たい棒みたいなのが、おでこに当たった。

「ごめん、美玲」
「なあに?」

 がぅんっ。

 美玲が目を開けるのと、愛しい愛しいゆーくんが拳銃の引き金を引くのは、ほとんど同時だった。