……おおかみ。この村に居る、こわいケモノ。ヒトをむしゃむしゃ食べてしまう。だから沙羅のおじいちゃんからもらったお守りは、ランドセルにいつもしまっていて、いつでも取り出せるようにしてる。沙羅と言えば……

(お祭り、キレイだったなあ……)

 確かあの時は、まっずいお肉が出てきて……食べた人みんなが……おおかみになって……

(あれ? それから? ボク、どうしたんだっけ)

 気がついたら家に居たんだった。大好きなオムライスをお母さんが出してくれて、おいしいなあ、あんな変なお肉とはちがうなあ。そんなことを考えながら食べたんだった。でもなんでか……なにか大切なことを忘れている気がして、胸に穴が空いているみたいに感じるのだった。

(会いたいなあ、ゆーくん。どこいっちゃったんだよ。第一部貸したじゃん。感想、聞かせてよぉ)

 ねえ、ゆーくん。二十巻の表紙のヤイバくんにそう話しかけた時。
 ぴんぽーん、玄関の呼び鈴が鳴った。