ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

 雪が降っている。真っ白な雪道で。金髪の吸血鬼が倒れている。

「やめてくれ……お願いだ、私から、私からその子を取り上げないでくれ……」

 ベルベッチカは黒い影に向かって叫んだけれど、影はエレオノーラを抱くと、そのままどこかへと消えた。

「ごほっ、ごほっ……エレオノーラ、エレオノーラァっ!」

 オリジンに我が子を奪われた新月の少女は、雪の上で血を吐きながら絶叫した。

 ……

 ……大祇村。夕方。ゆうはむせると、血を吐いた。ずきんっ、胸に信じられない痛みを感じる。
 アバラが折れているのだが、ゆうは構わず倒れた仏壇からはい出た。
 家の中は暗い。窓の外も暗い。そして……リビングには誰もいない。

「お母さん……お母さん!」

 その呼びかけに、優しい笑顔で答える大好きなお母さんは、もう居ない。

『赤ちゃんがね、出来たの』

「うわああぁぁぁぁ──!」

 始祖に母を奪われた新月の少女は、家のガラスを全部割って絶叫した。