ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

 ふっ、と窓から差し込む太陽の光が弱くなり、部屋が暗くなる。かたかたかたかた……テーブルの上のマグカップが小刻みに揺れる。

「あら、地震かしら」

 何も知らないお母さんが自分のマグカップを見る。がたっ、とゆうは席を立った。

(守らなくちゃ。みかのようにはさせるもんかっ!)

『目を開けるんだ』
「? 開いてるよ?」
『あげたろ? 新月の目だよ。ヒトの目よりはうんと利くはずだよ』

 ベルにも見えなかった「敵」だ。正直怖い。でも。

『額にもうひとつ目があるつもりで、額に意識を集中しながらゆっくり、目を開くんだ』

 でもベルが教えてくれる。新月のモノの生き方を。闘い方を。

「額に……もうひとつ……開く……」

 ゆうはそう呟きながら、額に意識を集中する。じんわり、暖かくなる。ぱちり……赤い、真っ赤だ。視界が赤い。ちょうど、テレビで見た赤外線カメラで見ているような感じだ。

『後ろだっ』

 ベルの声に振り返ると「白く光る人型のナニカ」が、ゆうのお腹に打撃を与えた。

「おかあさ──」

 ゆうは数メートル飛びリビングと和室の間のふすまを破り仏壇に突っ込んで、意識を失った。

 ……