「……とにかく。……お母さんは反対よ」

 え。
 ゆうは予期していない言葉に耳をうたがう。

「そんな危ない相手だったら、倒したりしないで、そっとしておくのがいいんじゃないかしら」
「……何言ってるの? 村の人たちがおおかみにすり替えられてるんだよ? こうしている間にも、また誰かが襲われるかもしれないんだ」
「あなたがやらなくていいって、言ってるのよ。そういうのは沙羅ちゃんのおじい様とか、そういう訓練された人がやるの」

 お母さんは何を言っているのだろう。おじいちゃんの言っていたことを忘れてしまったかのよう。

「でも……僕はベルを取り戻したくて……」
「死んでしまった女の子をひとり生き返らすのに、村の人みんなを殺すの? よく考えて。ゆうちゃん。いのちの価値を考えて。死んだ子ひとりと、村のたくさんのいのちを……」
「死んだ子ひとりじゃない! 僕の、僕の全てなんだ! ベルは」

『きみ。愛しいきみ』

 突然、ベルの声がした。

『オリジンだ。気をつけろ、すぐ近くだぞ』