「オリジン、ねえ」

 家に帰るなりお母さんはお湯を沸かし、コーヒーをマグカップに入れた。お母さんが好きな色の緑のマグカップだ。ゆうには、青い空と雲のいつものマグカップに、やっぱりトマトジュースを注いでくれた。ずず……コーヒーをすすりながら、お母さんは言った。

「始祖のことよね……ベルベッチカちゃんは、そう呼んでたのね」
「……うん。ずっと長い間追いかけられてたみたい」

 ごくん……痛むお腹をトマトジュースが和らげてくれる。お母さんはゆうをまっすぐ見た。

「……で、ゆうちゃんは倒したいの? 村の人みんなを殺すことになっても?」
「……ううん、みんなじゃない。沙羅はまだヒトだよ。おじいちゃんも」
「それでも、翔くんや美玲ちゃん、みかちゃんに、こうさか亭の結花ちゃんも、みんな殺すの?」

「ちょっとまって」

 ゆうはお母さんを遮った。言葉の中に何か、とてもとても大きな違和感を感じたからだ。

「……どうしたの?」

 お母さんは目を丸くしている。
 けれども……なぜかそれがなんなのかは……わからなかった。