消毒液の臭いがつんとする。白くて衛生的な光の蛍光灯。薄いマットのベッドの上で目が覚める。
 沙羅がゆうの名前を呼んで心配そうに覗き込むけれど、ゆうは顔を覆った。

「……がっかりしたろ。僕が……女で」

 見て欲しくなかった……消えたかった。こんな、男らしさのひとかけらもない体なんて。

「がっかりしないよ」

 声がこちらを向いている。彼女はゆうをまっすぐ見ているのだ。

「……うそつき」

 目を背けているのはゆうの方だった。

「うそじゃないよ」

 けれど、まっすぐ見られれば見られるほど、心が締め付けられるように感じた。

「うそつくなよ」
「うそじゃない」

「うそつくな!」

 ゆうはかあっとなった。長い金髪を振り乱してどなった。

「女なんだぞ! わかってるのか! 新月のモノだったんだぞ!」
「それでもいい!」

「それでも、いい。あたしは……ゆうちゃんが、好き……」

 そう言うと、泣き出しながら部屋を飛び出した。