「僕も大好き……ねえ、始祖って、オリジンって。それは、だれ?」
「何度も言ってる。わからない」

 そうだ。誰かもわからない、それが始祖だった。

「……でも、案外近くに居るのかもしれない。私を見て。エレオノーラ。いや、ゆうくん」

 そう言うと、抱きしめた腕を外し、両肩に手を乗せ真っ直ぐ見つめた。

「これからは戦いだよ。生き残るための。君の願いを叶えるための」
「僕の……願い……」
「ふふ。知っているよ……でも、それには命を刈り取らなくてはならない。君の村の、ヒト以外の全ての命を。それには、激しい抵抗に遭うと思う。だから私があげられる次の力をあげる」

 そう言うと、ベルベッチカは娘に口付けをした。舌を絡めて、唾液を送って。
 ベルベッチカ・リリヰの舌の味は。
 ゆうに真実を見抜く新月の目を与えた。
 口を離したベルが、指をさす。

「ほら、見えるようになっただろう。私が『負けて』、転校の日まで封印される、その瞬間だよ」

 ……