「十三日」
「えっ」
「私が愛しいきみをこの手で抱くことが出来た日数だよ」

 ベルが崩れかけたガラス細工みたいな顔で、両の手を見た。

「二週間も居られなかった。お乳は最後まで出なかった」

 小さな母親は哀感を込めて、息子にそう告白した。
 ゆうは涙ぐんで叫んだ。

「どうして、どうして僕を手放したのっ? ずっと、ずっと、ベルと居たかったのに!」

 ベルは広げた手のひらを握りしめ、目に涙を浮かべ、言った。

「負けたんだ……オリジンに。許しておくれ娘よ、私のこの世でいちばん大切な、エレオノーラ」

 ぎゅっ、とベルが抱きしめてくれた。信じられないほど冷たい。声が震えている。