階段を下り切ると渓谷になっていて、正面には川、左には血のように真っ赤な鳥居と、大きく口を開けた洞窟が見えてくる。
 まるで狼が口を開けているかのような……大祇神社だ。
 鳥居の手前には同じ赤い色の木造の社務所があって、沙羅のおじいちゃんが宮司さんをやっている。鳥居をくぐるとすぐに洞窟で、洞窟の中にも不気味な血の色の本殿が塞いでいて、普段は中に入れないし中も見えない。そんなに古くは無さそうだし、洞窟も入り口は広くて明るいんだけど、普段からやたらと怖い。洞窟の左右に立つ狼の石像が、どの方向から見てもこっちを見ているように見えるからだろうか。

「……よーし、じゃあレッツゴーだな!」

 みんなが集まったのを確認した翔が先陣を切って、神社の脇の山道に入った。その山道は、足を取られやすくて歩きにくい。木の根が触手みたいに足元に伸びていてでこぼこだし、ひざより高い下生えが、こしょこしょと足をくすぐる。でも、大祇小学校のみんなは、そんなの気にしない。たんけんのたび、五箇所は蚊に刺されるし、雨の中でも強行されるけど、へっちゃらだ。この道は洞窟を迂回しながら登るようになっていて、道なりに三十分ほど登った先に、「お屋敷」がある。