「おいー、しっかりしろよお」
「翔、ゆうじゃ茜に勝てないって」

 沙羅がゆうの肩に手を当てて、覗き込む。

「ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だったら」
「さらー? 男子は敵チームでしょー」

 茜が沙羅に釘を刺す。

「でも……調子悪そう……」
「ならチャンスじゃん! きょうはアタシらで男子をギャフンと言わせてやろうよ!」

 また、試合が再開された。ボールは足の速い翔がキープする。そこに茜が張り合う。ふたりのボールの取り合いを見ると、中学生にも勝てるんじゃないかと思う。

「ゆう、頼む!」

 茜に取られそうになった翔が、苦し紛れにゆうにパスを回した。ゆうをマークするのは超運動オンチのみかだけだ。美玲がゴールキーパーのゴールも近い。ドリブルを続けて、みかを引き離した。

「ごめん、美玲、おねがい!」
「ええっ? あわわわ」

 ゆうを止められなかったみかが叫ぶ。ゴールキーパーなんてほとんどやったことの無い美玲は泡をくった。

(いまだ!)

 ずきんっ。
 ……シュートする直前。鋭い痛みがお腹に走って、転んだ。帽子が脱げて、長い金髪があらわになる。すかさず、美玲が転がるボールを取った。