令和六年九月十日、火曜日。日本、岩手県、大祇村。

「おーい、大丈夫かー」

 昼休み、蒼太が校庭のベンチに座るゆうを覗きこむ。航もやってきた。

「う、うん……ちょっと、お腹痛くて……」
「大丈夫大丈夫」

 翔がやって来てゆうの代わりに勝手を言う。

「ゆうが腹痛いのはいつものことだって。なあ?」
「……そだね、うん、大丈夫」
「よっしゃあ、サッカー再開なー」

 ゆうはよたよたと校庭に出ていった。沙羅が心配そうに駆け寄る。

「大丈夫?」
「大丈夫……最近多いんだ」
「おーい、そっち行ったぞー」

 蒼太の蹴ったゴールキックが、ゆうの方へ飛んでくる。
 ありがと。短くそう言うとボールめがけて駆け出した。

「ゆーちゃん、わるいねー、アタシがいただきっ!」

 茜が素晴らしい脚力で、ボールを受けようとしたゆうからボールを奪った。
 ゆうも走るが、いつものどんそく。茜にあっという間に引き離された。
 そしてゴールキーパーの蒼太をいとも簡単に突破して一点入れた。