ベルベッチカ・リリヰの舌の味 おおかみ村と不思議な転校生の真実

「やめろって!」

 ゆうは、帽子をそっと取ろうと手を伸ばしていた翔の手を払った。そのせいで、翔が手に持っていたアイスが、角田屋の玄関先の床に落ちた。

「あー! おれのなけなしのアイスがー!」
「ふん。翔の行動はお見通しなんだよっ」
「でも、ゆうちゃん、どしていっつもそれ被ってるの?」
「あー、それボクも気になるー!」

 ギャラリー達がわいわいお店の前で騒ぐ。

「いいの。僕には必要なんだ。……翔、次取ろうとしたら殴るからな」

 そんなあ、と翔が情けない声を出す。

「いこ!」

 ゆうは翔を置いて、女子二人を連れて角田屋を出た。

「でもあたし、ゆうちゃんの髪、好きだけどな」
「ボクも! 綺麗だよね」

 ゆうは大きなため息をついて、女子らを睨んだ。

「お前たちまで、なんだよ。いやだと言ったらいやなんだ。こんど言ったら、二度とおごってやんない」

 えー、沙羅と美玲が残念そうに嘆く。

「じゃあね」

 ……