と、お母さんを見ると、サーロインステーキを食べたのに、一人前のビーフシチューまで食べてしまった。もともと食が細くて痩せているひとだ。だからゆうはびっくりした。
 こんこん。
 結花がピッチャーを持って入ってきた。慌ててトマトジュースを隠す。

「あれ。相原くん、食べてくれた?」
「あ、ああ、美味しかったよ、ありがとう!」

 ゆうは取り繕うが、バレずに済んだ。

「今日のビーフシチューね、わたしが仕込んだんだよ! 相原くん大好きでしょ」

 そう言いながら、減ったグラスに水を注いだ。

「美味しかったのなら、良かった! また週明け月曜日ね!」

 結花は、にっこり笑って、おじぎをして、個室から出た。

「……食べたかったなあ……ビーフシチュー」
「まあ、暗い顔しないで。今日はいいニュースがあるのよ」
「静、なんだ、ニュースって」
「ふふ」

 お母さんはすうっと息を吸って、そして言った。

「赤ちゃんがね、出来たの」