大祇神社は、ゆうの家と反対だ。学校から丁字路を右に曲がって、十五分は歩く。空は梅雨の晴れ間からお日様が覗いていて、とても蒸し暑い。時々ハンカチでふかないと汗がぽたりと滴る。それでも、クラスメイトとだべりながら、クルマもほとんど通らない道路に広がって歩くのは楽しかった。午前中雨だったから、片側一車線の歩道のないありふれた道路は濡れていて、所々水たまりが出来ている。道路の両脇は田んぼになっていて、けろけろとカエルが鳴いている。用水路には水が勢いよく流れていて、ちょっとだけすずしい気持ちになる。田んぼには電柱がカカシ代わりに立っていて、空に黒い線を引く。その田んぼが終わると、神社の森に入る。スギの森だけど、家の周りとは比べ物にならないくらいみきが太い。その先の道は道幅が狭くなって、きつい上り坂がくねくねと山を登っている。
 翔や蒼太や航は、息も切らさずにその坂を登る。沙羅とみかはふうふう言ってる。僕も同じように息が上がった。……こんな自分が、嫌だった。
 上りが終わってもうしばらく行くと、道の脇に階段が右側に見えてくる。下りの階段で、転がり落ちそうな長さでゆうに百段はある。石で出来たその階段は、所々石が緑色になっていて滑りやすい。赤く塗られた手すりをつかみながら、みんなでその階段を下りる。
 翔と蒼太は、イカのゲームの話をしている。航も、時々混じった。沙羅とみかは何かこそこそ話しては、くすくすしている。

「ふふふ……逸瑠辺(へるべ)さんってさ……だよね……あはは」
(ふつうの女の子って、なんでいつもくすくすしてるんだろ)

 へんなの……ゆうは素直に疑問だった。