結花のお父さんに案内されて、店の奥の個室に案内された。山奥の村にあるとは思えないほど、きれいな個室だった。ステンドグラスみたいな窓から、テーブルの上の小物まで、結花のお父さんのこだわりが透けて見える。

「まあ、きれいなマリーゴールド」

 んー。んー。お母さんは鼻歌交じりに上機嫌だ。……いつもの記念日より、機嫌がいいように見える。

「お待たせいたしました」

 あらかじめお母さんが注文していた料理が運ばれてきた。毎年、同じものを注文している。
 お父さんはサーロインステーキ。ゆうは、ビーフシチュー。お母さんは、白身魚のムニエル。
 ……のはずなのだが、今日はサーロインステーキだ。

「お腹減っちゃって」

 そう言ってペロリと食べてしまった。
 食べれないでいると、お母さんが紙パックのトマトジュースを出してきた。

(はあ。ビーフシチュー、食べたかったな……)

 そう思いながらちゅうちゅうとトマトジュースを吸った。