坂を登りきって、神社の下り階段が遠くに見えてきた頃。

「相原ちゃん」

 みかが下を向いたまま、つぶやくように口を開いた。

「大祇祭。どうだった?」

 ぎくり。ゆうは心臓を針でちくりと刺されたようだった。

「どうって……どういう意味……?」
「……本殿着いたら、話すね」

 長い階段を下りて、境内に着いた。川の音が聞こえる以外とても静かで、洞窟が近くにあるからか少しだけひんやりしている。仮の本殿も何事もなかったかのように洞窟の入り口に立っている。相変わらず嫌な雰囲気だと思って見ていると、みかが覗き込んで、何か見せてきた。

「相原ちゃん。これ」

 小さなジップロックに、黒い何かの毛みたいなのが束になって入っている。

「……これって。まさか……」

 こくり、とメガネの少女は頷いた。

「こっちが、私たちがお屋敷で最初に遭ったおおかみ。で、これが、祭りの日に現れたおおかみのもの。比べてみて」

 そう言って、もうひとつ、ジップロックを出した。……同じに、見える。

「だよね?」