七百歳の吸血鬼はお腹を抱えて笑った。久しぶりだった、こんなに大きな声で笑ったのは。久しぶりだった、こんなにきれいな家に住むのは。あんまり笑うから。……笑うから。
気持ちが悪くなった。急に、吐き気に襲われた。その場でうずくまって、吐きもどした。でも最近は何も食べて──血を吸って──いないから、胃液がでるだけ。
苦しそうにえずく彼女に、愛しい彼が背中をさすりながら心配そうに覗き込んでくれる。
「ベルベッチカ! 大丈夫?」
「うん……大丈夫……たぶん」
彼女には、思い当たるコトがあった。
……
令和六年九月五日、木曜日。日本、岩手県、大祇村。
「相原ちゃんさ、ちょっと時間くれない?」
女子唯一のメガネ少女でロングヘアに白のカチューシャ、みかが放課後声を掛けてきた。
「なに? みか」
「見てほしいものがあるんだよね」
今日は九月なのに朝から猛烈に暑い。そしてみかの家は下町だから、行ったらそれだけで十五分、帰るのにも三十分は歩く。……なるべく、避けたい。恐る恐る聞いてみた。
「ううん、神社まで」
神社なら近い。良かった。そう安心して彼女を見ると、何やら顔色が悪い。いつものおとぼけ天然の、忘れ物クイーンじゃない。
気持ちが悪くなった。急に、吐き気に襲われた。その場でうずくまって、吐きもどした。でも最近は何も食べて──血を吸って──いないから、胃液がでるだけ。
苦しそうにえずく彼女に、愛しい彼が背中をさすりながら心配そうに覗き込んでくれる。
「ベルベッチカ! 大丈夫?」
「うん……大丈夫……たぶん」
彼女には、思い当たるコトがあった。
……
令和六年九月五日、木曜日。日本、岩手県、大祇村。
「相原ちゃんさ、ちょっと時間くれない?」
女子唯一のメガネ少女でロングヘアに白のカチューシャ、みかが放課後声を掛けてきた。
「なに? みか」
「見てほしいものがあるんだよね」
今日は九月なのに朝から猛烈に暑い。そしてみかの家は下町だから、行ったらそれだけで十五分、帰るのにも三十分は歩く。……なるべく、避けたい。恐る恐る聞いてみた。
「ううん、神社まで」
神社なら近い。良かった。そう安心して彼女を見ると、何やら顔色が悪い。いつものおとぼけ天然の、忘れ物クイーンじゃない。

