あのわらべうたは、この娘のことだったのでしょうね。

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ひとりの娘がおりました。
娘は家族も財産も健康も、何一つとしてありませんでした。

娘の住む村の人々は、数年と続く干ばつにひどく悩まされておりました。

「水神様に捧げましょう」

そうして娘は人身御供(ひとみごくう)となりました。


娘は呪っておりました。
この身を呪っておりました。

代われるものなら代わりたい。

可愛らしいあの子と。
健やかなあの子と。
愛されるあの子と。

呪いは願いとなりました。
願いは気づけば叶っておりました。


めでたしめでたし。


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小学生の頃、下校時に時々、校門の前でパンフレットやチケットを配る団体を見かけました。
配布物は大体が子ども向けのイベントや映画の無料上映会などに関わるものだったのですが、一度だけ異様な小冊子を受け取ってしまったことがあります。

中は絵本風の昔話のようだったのですが、どこか不気味な絵と不穏な物語が、今でも心に残っています。
実家に帰った時、その小冊子が未だに保管されていました。

何故とっておいたのか訊くと、母は微笑みました。

「いいお話だったから」