ナニカはふらふらと自由に浮いていた。手には青と黄色のガラス玉が1つ。じぃ…とガラス玉を見つめ、かぱ、と口を開けた。ガラス玉を口に頬張る。コロコロと飴玉みたいに口の中で転がす。
ちらりと見たのは桜と大勢の人間。寒い冬が過ぎ、春が訪れたのだ。ナニカは不思議そうにその光景を見ながら、口の中のガラス玉を噛んだ。ガラス玉がバキ、と割れる。

『願わくば彼女にも、幸せな季節が巡りますように。』

ナニカは季節とは何なのかを知らない。