その存在がどういうものかはそれぞれの視点で変わる。神が悪魔か、はたまたどれでもないモノか。ここでは『ナニカ』と呼ぼう。

ナニカは探していた。ナニカは願いを叶え、その代償で生命を繋いでいる。ナニカが生きているのかいないのか、それは本人にさえ分からない。なぜ願いを叶えるのか、なぜ代償で生命を繋ぐのか、本能のままにしてるだけで理由なんてものはない。

「なにあれ。」

ナニカが見つけたのは毛玉だった。白いふわふわで青と黄色の瞳。
「あ、あれだ。犬…じゃなくて、猫。人間がそう呼んでるやつ。」
白い毛玉がふわふわと歩く。人間を見つけたと思ったらちょこちょこついていき、見守るように眺めている。そして、その人間が自分の家に向かうと、猫は満足したように別の家に帰るのだった。
「なんだ、あれ。一緒に住んでるんじゃないんだ。」
ナニカはその日から猫を見ていた。猫はせっせと毎日とある人間を見ては満足して帰るのだ。ナニカは毎日暇つぶしにふわふわ浮きながら猫を観察していた。

数日間、猫を観察して気づいたことがある。
猫は夕方頃にうろうろして人間を見ていること。ある人間が家に帰ると自分も家に帰ること。そしてこの猫と主人はもう長くはないこと。
「うん、決めた。」
ナニカは今回の代償をもらう相手を決めたのだった。