いつもより早く帰宅した新が念入りに手洗いとうがいをしたあと、リビングのテーブルに置かれた2枚のDVDを見つけた。
 1枚は『妊婦のためのエクササイズ』。
 もう1枚は『安産のためのエクササイズ』だった。
 
「これどうしたの?」

 ただいまのキスのあと、2枚を考子にかざした。

「別に」

 体重増加抑制という説明をするわけにはいかなかった。

「スタイルを気にしているのかな?」

 新が悪戯っぽく迫ってきた。

「別に」

 そんなことには関心がない、というような声で返した。

「本当かな?」

 意地悪そうな笑みを浮かべて彼女の顔を覗き込んだ。

「もう、忙しいんだから邪魔しないの!」

 考子は台所へ行って、料理を始めた。

「ふ~ん」

 新はDVDを見つめてニヤニヤと笑った。